遺産相続には様々な面があります。
私達にプラスとなる遺産相続だけでは無く、逆にマイナスとなる遺産相続もあります。
例えば、被相続人様が多額の借金を残したまま亡くなった場合等です。
そのような『負の遺産』など、相続したい訳がありません。
これは、金銭のみならず、土地・家屋にも同様の事が言えます。
しかしながら、マイナスとなる遺産のみの相続放棄(一部放棄)をすることはできないことになっています。
但し、限定承認という制度は存在します。
これは、被相続人様の債務がどの程度か不明であり、また財産が残る可能性もある場合等に、相続人様が相続によって得た財産の限度で、被相続人様の債務の負担を受け継ぐ制度です。
(参考:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html)
では、私達がよく耳にする『相続放棄』制度とは?
・亡くなった被相続人様の財産についての権利・義務を一切放棄すること
・はじめから相続人ではなかったものとみなされる制度
です。
これは、相続開始の認知日から3ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申告する必要があり、一度行うと撤回不可能となる為、判断は慎重に行うことが望ましいでしょう。
本コラムでは、相続を放棄したい『土地』を、国が引き取る『相続土地国庫帰属制度』につきまして、情報をご提供して参ります。
*背景
管理されていない空家・土地(放置不動産)が増加傾向にあり、今以上の発生を早急に抑制する為の『譲渡所得特別控除措置』が制定されたこと、また、空家発生のきかっけの多くは相続時が過半数であることについては、前回コラムにても記載の通りですが、『相続した土地を国が引き取る制度=相続土地国庫帰属制度』が、2024年(令和5年)4月27日より創設されました。
相続人様『土地』を相続したものの、
・遠方の為、該当の『土地』を利用する予定が無い
・近隣住民の皆様へご迷惑をお掛けしないよう『土地』の管理が必要ではあるが、負担が大きい
等の理由により、『土地』を放置してしまう、という事案が増加しており、
このままでは、所有者不明の放置不動産が減ることはなく、本末転倒であります。
そのような事態を未然に防ぐ為、相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)により『土地』の所有権を取得した相続人様が、一定の要件を満たした場合に『土地』を手放し国庫に帰属させることが可能となりました。
*『相続土地国庫帰属制度』の諸条件
本制度は、以下の条件を満たしている場合に適用対象となります。
・承認申請可能者は、相続等により『土地』の所有権又は共有持分を取得した者
(売買等により取得した者、相続等により取得できない法人は、本制度利用不可)
・法務大臣の要件審査により、費用や労力がかからない、法令に規定された『土地』に該当する場合
→・一定の勾配や高さの崖が有り、管理に過分な費用や労力がかかる場合
・土地の管理や処分を阻害する有体物が地上にある場合
・土地の管理や処分の為に除去しなければいけない有体物が地下にある場合
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない場合
・その他、通常の管理や処分にあたり過分な費用や労力がかかる場合
・建物がある『土地』は申請不可
・担保権や使用収益権が設定されていないこと
・他人の利用が予定されていないこと
・土壌汚染されていないこと
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いが無いこと
(参考:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html)
上記要件を満たし、法務大臣の要件審査の結果、国庫への帰属を承認された者が一定の負担金(★1)を国へ納付した時点で、『土地』の所有権が国庫に帰属することになります。
なお、本制度開始前に相続等により取得した場合も対象となります。
★1:承認された『土地』につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮し算定した額の負担金を納付。納付は、帰属の承認を受けたときの一度のみ。
(参考:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html)
なお、本制度をご利用の際は、当該『土地』所在地の法務局(不動産登記部門)にてお手続きが可能です。
本制度により、前回コラムより引き続き、放置不動産の相続・譲渡が更に前進し、相続人様の管理のお手間や納税義務等の費用負担が解消され、ご不安の無い安心の毎日をお過ごしになられるよう、ご検討の一助となれば幸いに存じます。
弊社では、そのようなお客様のお困り事に寄り添い、ご一緒に解決策を見出すお手伝いをさせて頂きたいと考えております。
お困りの際には、どのような事でも是非お気軽にご相談下さいませ。
経験豊富なスタッフが誠心誠意ご対応させて頂きます。